地盤改良と法律〜知っておきたい4つの法規制〜(2026年10月15日)

これまでのコラムでは、地盤改良工事の基礎知識や工法の選び方、環境負荷といったテーマを取り上げてきました。
今回は少し視点を変えて、「地盤改良工事に関連する法規制」について紹介します。
地盤改良工事は、住宅など建築物を支えるための重要な工事であると同時に、土地の価値や環境にも影響を及ぼす工事です。そのため、いくつかの法律や通達が関連していますが、これらは法規制ごとに所管する省庁や部署、関連する業界分野がそれぞれ異なるため、全体像がわかりづらいという特徴があります。実際、住宅を建てる方の多くは、地盤改良工事にこうした法規制が関わっていること自体をご存じないのではないでしょうか。
今回は、地盤改良工事に関連する代表的な4つの法規制について、それぞれどのような目的で作られたのかを紹介します。法律や通達というと難しく感じられるかもしれませんが、いずれも住宅を建てる方や土地を所有する方の暮らしと無関係ではありません。下記の項目で詳しく解説します。最後までご覧ください。

◆目次◆
1.住宅品質確保促進法(2000年4月施行)
2.地盤改良工事に関する通達(2000年3月)
3.不動産鑑定評価基準の改定(2002年7月)
4.土壌汚染対策法(2003年2月施行)
5.法規制ごとに管轄が異なるという分かりづらさ
6.まとめ

1.住宅品質確保促進法(2000年4月施行)

1つ目は、国土交通省が所管する「住宅の品質確保の促進等に関する法律」、通称「住宅品質確保促進法」です。2000年4月に施行されました。
この法律では、住宅性能表示や、新築住宅の瑕疵担保期間を10年とすることの義務化などについて定められており、住宅会社の責任を明確にすることを目的としています。
住宅は完成後に不具合が見つかっても、原因の特定や責任の所在が分かりにくいことがあります。この法律によって、住宅会社が一定期間の瑕疵担保責任を負うことが明確になったことで、住宅の品質確保に対する意識が業界全体で高まりました。
そして、この法律の施行後、住宅分野でも地盤改良工事を行うことが増加したといわれています。地盤が原因で建物に不具合が生じれば、瑕疵担保責任の対象となる可能性があるため、事前に地盤を調査し、必要に応じて地盤改良工事を実施する流れが定着していったと考えられます。
施主の立場から見れば、この法律があることは、住宅会社側が地盤の安全性を意識する一因になっていると考えられます。地盤改良工事の提案を受けた際には、こうした背景も踏まえて話を聞いてみると、理解が深まるかもしれません。

2.地盤改良工事に関する通達(2000年3月)

2つ目は、国土交通省が2000年3月に出した「地盤改良工事に関する通達」です。
この通達は、公共工事において、セメントを使用する地盤改良工事を行う場合に、事前に「六価クロム」の溶出試験を実施し、土壌環境基準に適した措置を行うことを、発注官庁から工事請負業者に求めるものです。
セメント系の地盤改良工事では、使用する固化材の種類や土質によって、六価クロムが土壌環境基準を超えて溶出する可能性があります。そのため、公共工事ではこうした確認が求められているのです。
一方で、この通達はあくまで公共工事を対象としたものであり、民間工事では同様の確認が義務付けられているわけではありません。そのため、住宅など民間の地盤改良工事では、六価クロムの溶出試験が行われていないケースも少なくないといわれています。
この点は、住宅を建てる方にとって意外と知られていない事実かもしれません。公共工事では当たり前に行われている確認が、民間の住宅工事では必須ではないという違いがあることを、まず知っておいていただければと思います。

3.不動産鑑定評価基準の改定(2002年7月)

3つ目は、国土交通省が2002年7月に改定した「不動産鑑定評価基準」です。
不動産鑑定評価基準は、不動産の鑑定評価を行う際の基準となるものですが、この改定により、土地の価値に影響を及ぼす要因として、新たに「土壌汚染」と「地下埋設物」が追加されました。
これは、地盤改良工事とも深く関わる改定です。地中にセメントで固めた土や鋼管などが残置されている場合、それらは「地下埋設物」として、土地の鑑定評価に影響を及ぼす可能性があるということが、この基準によって明確に位置づけられたことになります。
つまり、地盤改良工事によって地中に残されたものが、将来的に土地の資産価値そのものに影響しうるということが、公的な評価基準の中でも示されています。
これから土地を売却したり、相続したりする可能性がある方にとっては、こうした基準が存在することを知っておくだけでも、将来の資産価値を考えるうえでの一つの視点になるでしょう。地盤改良工事を行った際には、どのような材料が地中に残るのか、施工記録とあわせて確認しておくことが望ましいといえます。

4.土壌汚染対策法(2003年2月施行)

4つ目は、環境省が所管する「土壌汚染対策法」です。2003年2月に施行されました。
この法律は、土壌汚染の状況を把握し、土壌汚染による人の健康被害を防止するための措置などを実施することにより、国民の健康を保護することを目的とした法律です。
地盤改良工事そのものを直接規制する法律ではありませんが、土壌汚染が確認された場合の対応や責任の所在に関わる法律であるため、地盤改良工事によって地中に何が残されているかという点とあわせて理解しておくとよいでしょう。
土地を購入したり、土地の上に建物を建てたりする際、土壌汚染の有無は目に見えて分かるものではありません。だからこそ、こうした法律が整備されていることを知っておくことは、土地の安全性を考えるうえでの前提知識として役立つでしょう。

5.法規制ごとに管轄が異なるという分かりづらさ

ここまで紹介してきた4つの法規制は、それぞれ目的も所管する省庁も異なります。住宅品質確保促進法と地盤改良工事に関する通達、不動産鑑定評価基準は国土交通省が所管する一方、土壌汚染対策法は環境省が所管しています。
また、関連する業界分野も、住宅会社、建設・公共土木系企業、不動産業・銀行、土壌調査会社など多岐にわたります。
このように、法規制ごとに管轄する省庁や部署、関連する業界分野がそれぞれ異なることが、地盤改良工事における地価や環境への影響がわかりづらい一因になっていると考えられます。地盤改良工事は、民間市場で行われる工事そのものが規制されているわけではなく、これらの法規制はそれぞれ異なる角度から間接的に関わっているというのが実情です。
言い換えると、住宅を建てる方や土地を所有する方が、これらの法規制をすべて個別に把握するのは容易ではありません。それぞれの法規制がどのように関わっているのかを都度確認するよりも、地盤改良工事に詳しい担当者に気になる点を尋ねてみるほうが、話が早いかもしれません。

6.まとめ

今回は、地盤改良工事に関連する4つの法規制について紹介しました。
住宅品質確保促進法は住宅会社の責任を明確にし、地盤改良工事に関する通達は公共工事での土壌環境基準への配慮を求め、不動産鑑定評価基準の改定は地下埋設物が土地の価値に影響することを位置づけ、土壌汚染対策法は土壌汚染による健康被害の防止を目的としています。
それぞれは異なる目的で作られた法規制ですが、いずれも地盤改良工事と間接的に関わっており、住宅を建てる方や土地を所有する方にとって知っておいて損はない内容です。
特に、不動産鑑定評価基準に土壌汚染や地下埋設物が土地の価値に影響する要因として位置づけられている点は、地盤改良工事によって地中に残るものが将来の資産価値と無関係ではないということを示しています。住宅を建てる時点では意識しにくいことですが、長い目で見れば、土地を次の世代へ引き継ぐ際や売却する際に関わってくる可能性がある内容だといえるでしょう。
地盤改良工事は、完成すると目に見えなくなる工事です。だからこそ、こうした法規制の存在を知っておくことが、将来にわたって安心できる住まいづくりや土地活用につながるのではないでしょうか。
次回のコラムでも、引き続き地盤改良に関する知っておきたい情報をお届けします。